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【最新研究】インドネシアのコスプレ市場を動かすのは「信仰」より「SNS」だった!260人調査でわかった東南アジア攻略のヒント

世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシア。実はいま、この国でアニメ・コスプレ文化が急速に広がっていることをご存じでしょうか。

一方で、こんな疑問を持つ方もいるはずです。「信仰心の強い国で、露出のある衣装も多いコスプレって、宗教とぶつからないの?」「宗教的な価値観が、コスプレグッズの購買にブレーキをかけているのでは?」

この素朴な疑問に、正面から数字で切り込んだ学術研究(https://e-journals.dinamika.ac.id/jamb/article/view/1482/596)が2026年7月に発表されました。インドネシアのコスプレイヤー260人を対象に、「熱狂(ファナティシズム)」「信仰心(宗教性)」「SNSマーケティング」の3つが購買行動にどう影響するかを統計的に分析したものです。

結論から言うと——インドネシアのコスプレ購買を動かしていたのは、宗教心そのものではなく、SNSでした。 本記事では、この研究データを噛み砕きながら、東南アジア市場でコスプレ・アニメ関連の活動をしたいクリエイターやブランドが押さえておくべきポイントを読み解いていきます。

|参照論文: Saifuddin, M., & Khoirunnisa, T. A. (2026). Navigating Fanaticism, Religiosity, and the Impact of Social Media Marketing on Anime Cosplay in Indonesia. Journal of Applied Management and Business, 7(1), 86–102. スナン・アンペル国立イスラム大学(スラバヤ)/ DOI: 10.37802/jamb.v7i1.1482(CC BY 4.0)

※文献URL:https://e-journals.dinamika.ac.id/jamb/article/view/1482/596


そもそもインドネシアのコスプレ市場ってどうなってるの?

まず前提として、コスプレイベントはいまや世界規模で数十億ドル規模の一大産業へと成長しており、多くのスポンサー企業がこの熱心なファンコミュニティに注目しています。

そんな中でインドネシアが特殊なのは、国民の多くにとってイスラム教が日常生活に深く根ざしているという点です。研究者たちも指摘していますが、コスプレは宗教的・社会的な規範とぶつかることがあり、たとえば「露出度の高い衣装は、インドネシアで良識とされる服装の基準に反する」といった摩擦が実際に存在します。

つまりインドネシアのコスプレ文化は、「アニメへの熱狂」と「宗教的価値観」という、時にぶつかり合う2つの力がせめぎ合う独特の環境の中で育まれているのです。この複雑さこそ、今回の研究が注目したテーマでした。


調査の中身:260人のコスプレイヤーはどんな人たち?

この研究では、インドネシア各地のコスプレイヤーコミュニティから260人を対象にアンケート調査を実施。WhatsApp・Telegram・Instagramなどを通じたオンライン調査と、紙のアンケートを組み合わせて回答を集めました。分析には統計的な手法(PLS-SEM)が使われています。

回答者の顔ぶれを見てみると、インドネシアのコスプレシーンの「いま」が見えてきます。

  • 性別:女性が63%、男性が37%と、女性が多数派
  • 年齢:15〜24歳が全体の8割以上を占め、10代後半〜20代前半が中心層
  • 属性:学生が69%とダントツ。次いで自営業16%、会社員・公務員12%
  • 購入頻度:1〜2回が46%、3回が30%、3回以上が24%
  • 購入チャネル:なんと83%がSNS経由でアニメ衣装を購入

注目すべきは最後の数字。実に8割超が、SNSプラットフォームを通じてコスプレ衣装を買っているという事実です。この時点で、SNSが購買の主戦場になっていることがうかがえます。


【結果1】最強の購買エンジンは「熱狂(ファナティシズム)」

分析の結果、購買行動をもっとも強く押し上げていたのは、キャラクターや作品への熱狂的な愛(ファナティシズム)でした。統計的にも非常に強い影響(パス係数0.521)が確認されています。

なぜか? 研究者は「社会的アイデンティティ理論」で説明します。熱心なファンにとって、コスプレ衣装は単なる商品ではなく、「自分はこのコミュニティの一員だ」という帰属意識を示すシンボルなのです。だからこそ、経済的な損得よりも「好き」という感情が勝り、財布のひもがゆるむ——というわけです。

さらに面白いのは、熱狂的なファンはSNSマーケティングにも強い影響を与えていた点(パス係数0.549)。つまり彼らは、企業のマーケティングを一方的に受け取るだけの存在ではありません。自らコスプレ関連のコンテンツを作り、シェアし、拡散する「自発的なマーケター」として機能しているのです。口コミやユーザー投稿(UGC)を通じて、ファン自身が市場を盛り上げていく構図が見えてきます。


【結果2】意外!「信仰心」は購買を直接は動かさない

ここが今回の研究でもっとも意外な発見です。

信仰心(宗教性)は、コスプレ購買に直接的な影響を与えていませんでした(統計的に有意でなく、むしろわずかにマイナス)。世界最大のイスラム教国という前提を考えると、意外な結果に感じられるかもしれません。

研究者はこう解釈しています。インドネシアの多くのコスプレイヤーにとって、コスプレは「宗教的な行為」ではなく、あくまで趣味・レジャー・自己表現の一環として捉えられている、と。宗教的な信念と「対立するもの」ではなく、そもそも別のカテゴリーの活動として楽しまれているのです。

加えて、回答者の中心が15〜24歳という若い世代だったことも大きいと分析されています。この年代は、宗教的な規範よりも「自分らしさの探求」や「仲間からの承認」を重視する傾向が強い。だからこそ、信仰心がコスプレ購入を直接妨げることはなかったと考えられます。


【結果3】信仰心は「SNSを通じて」効いてくる

では信仰心はまったく無関係なのかというと、そうではありません。ここが本研究の核心です。

分析によれば、信仰心はSNSマーケティングに対しては有意なプラスの影響を持っていました(パス係数0.157)。つまり、信仰心の強い消費者ほど、SNS上のマーケティングメッセージに敏感に反応する——ただし、そのメッセージが**「信頼でき、敬意があり、自分の価値観と両立できる」**内容である場合に限って、です。

そしてSNSマーケティング自体は、購買行動をしっかりと押し上げていました(パス係数0.344)。

これらをつなぎ合わせると、こういう流れが見えてきます。

信仰心 → SNSマーケティング → 購買行動

信仰心は購買を「直接」は動かさないけれど、SNSという回路を通ると購買につながる。統計用語ではこれを「完全媒介(full mediation)」と呼びます。宗教的な価値観は、そのままではコスプレ購入の動機にならないものの、丁寧で、コミュニティ志向で、信頼できるSNSコミュニケーションに変換されると、間接的に購買を後押しするというわけです。

一方、熱狂については「部分媒介」。熱狂は直接購買を促すと同時に、SNSを経由してさらに購買を押し上げる、という二重の働きをしていました。

ちなみにこのモデルは、SNSマーケティングの51.5%、購買行動の59%を説明できるという、かなり説得力のある結果になっています。


じゃあ、東南アジア市場で活動するにはどうすればいい?

ここまでの結果を、コスプレイヤー・インフルエンサー・関連ブランドの視点で「使える教訓」に翻訳してみましょう。研究者が挙げた実務的な提言も踏まえて整理します。

1. 「楽しいコミュニティ」こそ最強の販促装置

熱狂的なファンは、放っておいても自らコンテンツを作り、広めてくれる存在です。だからこそ、単発の広告よりもファンが長く一緒に過ごせる、居心地のよいコミュニティづくりが効果的。オンラインの交流の場を用意し、ユーザー投稿を促し、コミュニティ内のインフルエンサーと組む——こうした地道な関係構築が、結果的に売上につながります。

2. SNSを主戦場と考える

回答者の83%がSNS経由で購入している以上、SNSは「おまけの宣伝チャネル」ではなく購買の中心舞台です。商品情報の発信、仲間同士のレコメンド、コミュニティ交流のすべてがSNS上で起こり、それが購買の不安を減らして後押しします。

3. 宗教を「壁」ではなく「調和させる対象」と捉える

これが最大の学びかもしれません。信仰心の強い層を「コスプレに興味がない客」と切り捨てるのは早計です。文化的・宗教的に配慮された、敬意あるコンテンツを届ければ、彼らもSNSを通じて反応し、購買層になりうる。研究者も「宗教心を障壁と見なすのではなく、適切に設計されたSNSコミュニケーションによって、信仰アイデンティティとファンとしてのアイデンティティを調和させられる」と結論づけています。

4. 「信頼」と「敬意」がキーワード

信仰心の強い消費者は、押し付けがましい広告よりも、信頼でき、敬意があり、自分の価値観と両立するメッセージに心を開きます。派手さより誠実さ——これが東南アジアのイスラム圏市場では効いてくるということです。


まとめ:インドネシア市場の攻略ルートは「SNS」に集約される

今回の研究が示したインドネシアのコスプレ市場のリアルは、次の3点に集約できます。

  1. 購買を最も強く動かすのは、作品・キャラクターへの熱狂。衣装は「好き」を示すアイデンティティのシンボルであり、熱心なファンは自発的な拡散者にもなる。
  2. 信仰心そのものは購買を直接動かさない。若い世代にとってコスプレは宗教とは別カテゴリーの「趣味」として楽しまれている。
  3. 信仰心はSNSを通じてはじめて購買につながる。宗教的な配慮のあるSNSコミュニケーションが、信仰アイデンティティとファン心を橋渡しする。

世界最大のイスラム教国という一見ハードルの高そうな市場でも、鍵を握るのは結局のところ「熱量あるコミュニティ」と「敬意あるSNSコミュニケーション」。この2つを丁寧に育てられるかどうかが、東南アジア市場での成否を分けそうです。

インドネシアをはじめとする東南アジアのアニメ・コスプレ市場は、これからますます面白くなっていくはず。数字とファンの熱量の両面から、引き続きその動きを追いかけていきたいところです。

 

本記事は、Journal of Applied Management and Business に掲載された学術論文(CC BY 4.0ライセンス)をもとに、OTABASE編集部がわかりやすく再構成したものです。数値・調査結果は原論文に基づいています。

※文献URL:https://e-journals.dinamika.ac.id/jamb/article/view/1482/596

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